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2020年09月11日

本の時間「恐妻家の殺し屋」

再び、〇坂幸太郎作品のハナシだ。前回は(去年のことだと思うが)マリアビートルのことを書いたと思う。彼の作品にハマっているわけではないのだが、彼の目新しい文庫本を見つけると何となく読みたくなってしまう(笑)。
初めて読んだのはゴールデンスランバーだと思う。彼の小説は、どの作品の登場人物も、みんな知的な雰囲気があって、ウイットに富んだセリフばかりで、とてもいい。一見乾いた表現のように見えるが、平易なコトバなのに奥深くて、思わずくぎ付けになる。作品ごとの世界観は荒唐無稽だが、読後感が良いからか、読んだ直後は次の作品を読みたくなる。
数えてみたら、あれから1年ほどの間に何冊か読んでいた。もしかしたらハマり始めたかもしれない。キャプテンサンダーボルト、陽気なギャングが地球を回す、そして珍しくエッセイ集3652も読んでみた。そして今回の本のタイトルは「AX」、どうやら、アックスと読むらしい。タイトルの意味は、・・・まぁナイショにしておかなきゃならない。ともかく、この作品の主人公は、またもや「殺し屋」だ(笑)。グラスホッパー、マリアビートルと同じように、この「AX」は、ファンからは殺し屋シリーズと呼ばれているようだ。でも夫婦や家族の物語にも思えるし、息子との物語のようにも感じる。これがいい味を出している。

読んだ直後に原稿を書くと、テンションが高いので、ネタバレしそうになる。だから少し時間を置いて、冷静に書くことにした(笑)。
主人公の「兜」は、やはり業界人だ。彼の作品に出てくる「殺し屋の業界」は、読者の日常的な暮らしの中に溶け込んでいる。だから、一種のリアリティーがあって面白い。仲介人との場面や、その依頼内容のやりとりなどは、むしろ楽しい。シリーズ?に登場した、何人かの殺し屋たちの昔話や消息が出てきたりするから、ファンにはたまらないだろう。シリーズには、蝉、檸檬、蜜柑、そういえば鯨もいたなぁ。業界人は、そんな「あだ名」で呼ばれる。主人公の「兜」もそうなのだが、今回は彼の本名も出てくる。
業界人の彼には友人がいない。人との付き合い方がヘタクソだからだ。そんな不器用な人柄を感じるためか、殺し屋なのに、なぜか応援したくなるから不思議だ(笑)。はじめてできた友人も「恐妻家」であることを知り、とても近親感を覚える、というシーンがある。そうだ、兜は恐妻家なのだ(笑)。その近親感を抱くエピソードに、なぜか僕も共感してしまった。恐妻家に共感している、とは言っても、僕は恐妻家ではない。決してそうではない。・・・と思う。・・・たぶん。まぁ、なにかと気を使っているのは間違いないかな(笑)。

でも、作品に出てくる恐妻家の彼の、奥さんに対する過剰な反応や、独特の言葉遣い、そして奥さんの鋭い反応に、「そうそう」と、うなづいてしまうのは僕だけではないと思うのだが(笑)。あらためて考えると、60を超えるとみんな恐妻家に近くなるのかもしれない。どうだろう、50くらいで形勢が逆転するのかな。いや、そんな年齢になると、オトコは寛容になり優しくなれるのだ。きっとそうだ。
読んでいる途中のことだが、主人公の真似をして、奥さんに対する「彼のノウハウ」を、自宅でいくつか試してみた(笑)。言葉の表現や言い回し、そしてタイミングを変えるだけで、いい旦那さんになれる気がしたのだが、甘くない、すぐにネタバレしてしまった。恐妻家というコトバが、当てはまるかはどうかは微妙なのだが、互いに優しくなるのは、いいことだと思う。でもね、世の中には悪いやつもいて、俺は恐妻家なんだよ、と周囲に言いながら、隠れて悪いことをしているから、そんなやつは要注意だな(笑)。

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