たた食べたくて「あんこ対決」
あんこ好きの常識は「井村屋のあんこ」だ。和菓子店の品のあるあんこでは物足りない。僕の場合、ある日、突然に「白玉あんこ」が食べたくなる。そんな時に買うのが「井村屋ゆであずき」だ。
白玉は、ゆで上がった後、冷水に取るのだが、「氷」を使ってはいけない。冷やしすぎると、白玉が固くなり、粉っぽくなって旨くなくなる。乱暴だが、少しぬるいくらいの白玉が旨い。あんこと白玉の割合は、普通ならもちろん白玉の方が多い。でも半々くらいなら嬉しくなる。僕の場合は、こっそり、あんこだけ増量したりする。あんこを食べるのであって、白玉は箸休めみたいなものだ(笑)。
先日、井村屋のゆであずきを探していた。てっきり缶詰だと思っていたら、最近はパック詰めのものに代わっていた。ゴミの分別がうるさいからだろうか。
僕が「あんこ」に目覚めたのは、ずいぶん昔のことだ。香林坊の喫茶店でアルバイトしていた頃、店のメニューの中に「あんこ」がたくさん登場していた。当時は、あんこのことを「小倉(おぐら)」と言うんだと学んだ(笑)。小倉ソフトクリーム、小倉パフェ、小倉ワッフル、というメニューを思い出す。狭い厨房の小さな冷蔵庫には、業務用の大きな「小倉あん」の缶詰が、ど~んと入っていて、別の容器に詰め替える必要がないほどのスピードで、でかい缶詰が次々に消費されていた。女性向けの喫茶店だからかもしれないが、世の中の女性は、みんな「あんこ好き」なのだと思っていた(笑)。そんな店だったから、「まかない」のときに、順に小倉シリーズを食べて、僕は、その魔力に魅入られたのだと思う(笑)。
思い込みと言うのは怖いもので、そんな経験が仇(あだ)となって、僕は「小倉あん」と「つぶあん」は同じものだと思い込んでいた。全く別のものだと知ったのは、ここ10年ほどのことで、あんこ人生の大半を勘違いで過ごしたことになる。小倉あんは、大納言(粒の大きな小豆の呼び名)を煮て密に漬けたものを「こしあん」に混ぜたもの。なので、どっちつかずのあんこだ。両方の良いとこ取りのあんこ、という言い方もあるかな。まぁ業務用には、コトバの響きが良いのかもしれない。
ある日のこと、いつものコメダ珈琲で会計するとき、レジ横に「コメダ特製の小倉あん」が売られていた。小倉トースト発祥の地?名古屋出身のコメダ珈琲だから、あんこの物販を始めたのだろうか。
あるとき、コメダの代名詞になっている「モーニングサービス」を食べたことがあった。ずいぶん前のことだ。そのとき、定番のゆで卵の代わりに「小倉あん」を選ぶことができると知って、試してみることにした。たっぷりバターには、イチゴジャムが一番似合うと思っていたが、コメダの「小倉あん」とバターの組み合わせは、驚くほど旨かった。さすが名古屋だと感心したものだ(笑)。
そんなコメダ特製の「小倉あん」だから、あんこ好きの僕が見逃すはずはなく、その場で買うことにした。それ以来、パンを食べるときに、楽しみが増えることになった。食べた結果、記憶通り、バターとの相乗効果は抜群だった(笑)。
そんな僕は、今日、大和の久世福商店に「久世福のあんバター」を見つけて、思わず買ってしまった。久世福商店は、僕のお気に入りなので、ふらりと立ち寄る。そしていつの間にか、無駄なものを買ってしまう(笑)。最近は、家飲みばかりなので、久世福のつまみ、何かないかなぁ、などと物色していた。「イワシ」のつまみをふたつ買い、さらにブラブラしていて、この「あんバター」の瓶詰を見つけたのだ。
買ったイワシは棚に置いて、さっそく、コメダと久世福のあんこ対決を楽しもうと思う。あんこ好きの性(さが)だな、これは。