農道の目薬ドライバー
僕の通勤路は「農道」だ。美川方面から御経塚へ向かう広域農道と呼んでいるが、正確な名称は知らない。僕が合流する徳光PAあたりから御経塚までは、往来4車線の立派な道路だ。この交差点では、なぜか時おり衝突事故が起こる。今日も、交差点の手前にミニパトが停まっていて、ん?っと思ったら、小型車が電信柱に軽くめり込んでいた。2車線から4車線に変わるあたりはスピードを出すからなのかなぁ。
農道だから道路の左右はず~っと田んぼが続く。お米や麦畑が多いが、農作物の生育と一緒に「畑の色」が次々に変化していく。そんな、のどかな道路なのは間違いない。夕方の帰路には、海側に虹がかかったり、きれいな夕日をみることもあって、けっこうお気に入りの通勤路だ。とはいえ、真冬になると吹きっさらしの海の横だから、アイスバーンは当たり前だし、夜にはホワイトアウトの危険な道になることもある。いずれにしても朝夕の通勤ラッシュを外すと、通行量も少なくて、信号もあまりないから、走りやすい快適な道でもある。
そんな道だから、何年か前までは「取り締まり」が多いのも特徴だった。いわゆる「ネズミ捕り」もよくあったし、交差点付近では、シートベルトやスマホの取り締まり?などが、たくさん行われていた。ドライバーたちも、それを心得ていて、反対車線の車にパッシングで知らせてくれたりする道路だった。しかし、あるときからネズミ捕りやパッシングを見なくなった。どうやら取り締まりの主役が「白バイ」に交代したからのようだ。雨の日が何日か続いた後に、すっきり晴れる日がやってくる。そんな晴天でウキウキしそうな日は、イコール危ない一日になる。天気のいい日は白バイが出没するからだ(笑)。
あの白バイ隊員のコスチュームはカッコいい。白のスカーフや大きなサングラスにあこがれて、入隊を希望する若者も多いことだろう。そういえば最近は女性の隊員も多くなったと思う。しばしば、一般車両と一緒に走りながら注意喚起しているし、物陰に隠れて、獲物を狙っていることも多い。何しろ敵は機動力があるので、反対車線からも簡単にUターンしてくるから要注意だ(笑)。僕は、長年この道を使っているから、白バイ隊員の「獲物」が想像できる気がする。この農道には「おかしなドライバー」が、たくさんいるのだ。
名称は知らないが、ずいぶん古いタイプのクラシックカー(オープンカー)や、不自然なバカでっかい車輪を履いたクロカン風の軽自動車。スマホを耳に当てて、伸ばした片手でハンドル握ってるシャコタンのセルシオも、僕にとっては一種の通勤仲間だ。ときどき出会う錆びた古い軽自動車は、いつもフラフラしている。あるとき気付いたのだが、その運転手はハンドルの上に、大きな地図を広げて走っていた。地図を見てたらフラフラするに決まってる(笑)。営業車なのかもしれないが、何度か見かけているから常習なのだろう。
走行中に、道具を使って本格的に化粧を直す女性がいる。バックミラー越しに見える彼女は、信号待ちで化粧し始め、そのままスタートしても化粧を止めない。何度かミラーをのぞくことになってハラハラする(笑)。先日はついに、走りながら「目薬をさす」女性ドライバーがいて驚かされた。信号が青になった直後とはいえ、まるで曲芸だ。僕も3種類の目薬を常備しているから、その気持ちが分からない訳ではない。差し忘れたら気付いたときに差す、これが眼科の指導だからね(笑)。
自宅近くの公園にはきれいな公衆トイレがある。その公園の物陰にも、ときおり白バイが潜んでいる。あるとき、散歩の途中で、この公衆トイレの前に、無人の白バイだけが停まっているのを見つけた。隊員は、そのトイレに入っているようだ。出てくる隊員を捕まえて、思わず声を掛けたくなってしまった。こんな機会はないから、僕は白バイ隊員の話が聞いてみたくてたまらない。隊員を相手に、あの危なそうなドライバーたちのことを話してみたいのだ。
でも、なかなか隊員は出てこない。で、ふと考えた。もしかして女性隊員だったら、ここにいる僕は、トイレ前で待ち伏せする気持ち悪いオヤジになってしまう(笑)。なので、気の弱い僕は立ち去ることにした。まぁ、女性隊員だとしたら化粧を直したり、目薬をさしたりしてるのかもしれない。