ホテルの時間「狭いロビーとマンゴープリン」
たぶん泊まったのは2回あったと思う。必ず2回使わないと勉強にならないからだ。独立した当時、ホテルの勉強をしていた頃の、僕のマイルールだった。そして気に入ると、何回も使うことになるし、ダメならそれっきりだ(笑)。初めての滞在のときは、おのぼりさん気分でワクワクしたに違いない。そして2回目のときは少し慣れて、けっこう冷静な気分で滞在したのだと思う。
何やら、あやふやな書き方なのだが、要するに、あまり覚えていないのだ。自分が撮った写真も客室のやつ数枚しか見つからない。仕方ないから、公式サイトを開いたら、あぁそうだった、なるほど、こうだった、とようやく小さなエピソードを思い出していた。つまり、当時の僕の記憶に残らないような、そんな体験だったということだ。高い宿泊費を支払って、無理して勉強しにいったのに、もったいない話だ(笑)。まぁこんな例は何度もある。念のために記すが、ホテルが悪いわけではない。宿泊利用する僕のほうの問題だ。
ホテルの名前は、ザ・Pニンシュラ東京。ミシュラン5つ星で、今や日本を代表する外資系ラグジュアリーホテルのひとつになった。このホテルは日比谷の角にある。つまり皇居の真ん前だ。三角形の土地に建っているから、皇居を背にすると高い塔のように眼前にそびえている。日比谷の交差点を渡った並びには、あのT国ホテルがあって、当時は、この外資系ホテルが、何となく喧嘩を売っているような、競い合っているような、そんな風に感じたものだ。
このホテルは、イギリス統治下の「香港」が発祥の地なのだそうだ。世界中にファンを持ち、その名声は、こんな僕も知っているほどだった。当時の東京はそんな外資系のラグジュアリーホテルのオープンラッシュで湧いていた。皇居に面したエントランスの車寄せにタクシーで入ると、高級外車(実は全てロールスロイス)が何台も止まっていて、ちょっとびっくりする(笑)。
後から知ることになるのだが、香港ではゲストの送迎に、ロールスロイスとヘリコプターが使われるらしい。つまり、このロールスロイスは香港と同じく送迎用で、いわばホテルの「アイコン」のような位置づけかもしれない。実は最上階の屋上には、ヘリポートもあるようだが、使われているのかどうか実際のところは分からない。ゲストが望めば、成田まで迎えに行くし、ロールスロイスで銀座へ買い物に出かけることもできるらしい。某デパートを開店前の1時間だけ貸し切りにするサービスも用意されているそうだ。笑うしかない(笑)。
今回僕が思い出したのは、ここの「マンゴープリン」と「アフタヌーンティー」のことだ。ロールスルイスやデパート貸し切りに比べれば、なんとも庶民的なレベルの話なのだ。荷物を預け、最初に向かったのは、ここのケーキブティックだった。その有名な「マンゴープリン」が目当てだったのだ。何しろ早くしないと、売り切れになるのだ。まぁ美味しかったと思う。きっとそのはずだ(笑)。ちなみに3年ほど前?に、27期の東京イベントのときにも、僕は一人、このマンゴープリンを食べに行っている(品切れで断念したけどね)。
そしてペニンシュラといえば「ザ・ロビーのアフタヌーンティー」が有名だ。アフタヌーンティーはこのホテルの代名詞だ。ロールスロイスで驚くエントランスから館内に入ったところが「ザ・ロビー」だ。まぁ何も知らなければ、ただのロビーなのだが、由緒正しい物語があるのだそうだ。たしかに内装も凝っている。
そのロビーには中央の通路を挟んで両サイドにカフェのようなテーブルが並んでいた。有名なアフタヌーンティーは、ここで食べるということらしい。何も知らない庶民の僕には、窮屈で貧弱な気がして、カフェとしても中途半端に思えた(笑)。外資系ホテルのアフタヌーンティーが空前のブームになるのは、少し後のことなので利用客も少なかった気がする。なので僕たちはアフタヌーンティーをスルーした。いまから思えば、もったいなかったかもしれない。後年、ホテルのアフタヌーンティーがテレビや雑誌でどんどん紹介され、このホテルは予約待ちの一番人気となっていった。まぁ王道の本物感とか老舗感が漂う感じだからかな。
その後も、ときおり、このホテルの前を通ることがある。高くそびえる外観、そして車寄せのロールスロイス(クラシックカー)は健在だ。そんなとき、泊まった時のあんなこんなの失敗ばかりを思い出す。今回の原稿を書きながら、さらにいくつかを思い出したが、いいエピソードが出てこない(笑)。まぁ、相性という言葉を使うのなら、決して良いとは言えないかもしれない。とはいえ、T国ホテルにもあまり良い記憶はないから、日比谷の日英決戦は、僕の場合は引き分けってところだ。
このホテル peninsula.com/ja/tokyo/